人間とは
常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること
もしそうなら
私たちはみな
日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを
知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ
その問いに
毎日のささやかな行動で
人は人を傷つける
人は人を慰める
人は人を怖れ
人は人を求める
子どもとおとなの区別が
どこにあるのか
子どもは生まれでたそのときから
小さなおとな
おとなは一生大きな子ども
どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけでは
きみをおとなにはしてくれない
他人のうちに
自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに
他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にも
しばられず
流れ動く多数の意見に
まどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組みなおし
つくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終らないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ
『魂のいちばんおいしいところ』より
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