2012/10/03

認知症専門OT × ADOC

日記をちゃんと書けよ,と娘に毎晩説いています.先日,tomoriくんと新橋のガード下で酒を飲みながら,同じ事を言われました.これから週に1回以上は日記を書きます.その時に話したのですが,Yhoo!ブログ時代の琉球OTが生々しくて丸くなれず純粋で,ボクは好きです.







9月8日,認知症専門作業療法士取得講習会Ⅲで,講師の手伝いを少しだけした.日本OT協会事務局が入るビルの10階で,新しい東京タワーを初めて見た.テーマは,介護老人福祉施設における認知症高齢者のOTだった.ボクは今,沖縄の特養で勤めている.10年前,この施設に面接に来たが就職できなかった.前日に面接した後輩が即日,採用されていた.仕方なく,回復期リハ病棟を開設する予定だった総合病院に就職した.でもそれが良かった.そこで作業療法に目覚めて研究や教育に関心を抱くようになって.養成校に就職した.



大きな目標を達成する目的と,前向きで家庭的な理由で再び臨床で働こうと思った時,この施設の門を再び叩いた,すでに内定を頂いた病院もあった.何度も誘ってくれる病院もあった.県外の大学院に誘ってくれる先輩たちもいた.それでも今の特養ホームに1月で3度も足を運んだ.



1度目は笑顔で断られ,2度目は苦笑で断られた.3度目,頂いた恩をボクが仇で返してしまった方が、力を貸してくれた.その方にボクを今回の恩は利用者にすべて返します,一生ここで働きますと誓った.祖母が軽費に2年,特養ホームに12年も暮らしていた.だから生活の様子やリハビリテーションについては経験的に少し知っていた.特養で働くOTの友人たちから話も聴いていたので,何を悩んでいるのか,何を望んでいるのかも少し知っていた.


MMSEやCDRで評価をして認知症ではない高齢者はほとんどいないので,今回のテーマは特養ホームの作業療法としてプレゼンした.スライドの1枚目は,


「特養ホームに作業療法士は必要ですか?」


おそらく,ピンとこないと思う.特養ホームで働くOTは日本の作業療法士の中で1%くらいしかいなかったハズ.同じ作業療法士でも特養で働いているOTの声はあまり聴いたことがないと思う.それから特養ホームにおける作業療法士の位置づけ,入居者や職員に期待されていること,人員配置,ボクが知っている全国各地の特養で働くOTの悩みと希望を伝えた.そこで再び,尋ねた.


「特養ホームに作業療法士は必要ですか?」


はじめの質問と違って,はっきりと答えをイメージできたと思う.残念ながら「必要ないかもしれない」と心の中で答えただろう.その上で,ボクが同僚の作業療法士と介護士と看護師と相談員と家族が一緒になって支援している実践についてプレゼンした.大事なことは,「特養ホームで,チームと一緒に,何をやったのか」ではない.何をやったかよりも,なぜやったのか,が大事.何ができたかよりも,どのような過程を踏む事ができたか,が大事.迷わず進むためには,作業の物語が重要な役割を担う.1つ1つの失敗や成功に一喜一憂しながら,今は誰にも見えていない大きな目標に向かって進むこと.入居者ひとりひとりの作業の物語を全員で支援できること.







作業療法と同じこと.自分に作業療法をすること,組織に作業療法をすること.そのために,まず自分に対して作業のインタビューすること,チームメンバーにも,家族にも作業に基づいた面接をする.認知症高齢者が症状にジャマされて作業についての対話をうまくできなかったら,変わらない生活に慣れてしまってイメージすることが難しかったら,実現不可能だと言われることを恐れて言葉を慎んでいるとしたら,ADOCを使って欲しいと伝えた.それはすべての問題を解決するためのツールにはならないかもしれないが,今より少しでも作業療法士が作業療法士らしくなれたと思うかもしれない.認知症高齢者が作業療法を通じて自分らしくなれるかもしれない.







特養内デイサービスは一見すると単なる書道や手工芸に見えるかもしれない.気晴らしの散歩や園芸に見えるかもしれない.でも,年齢や疾患や居住フロアや性別や要介護度や物理的環境で,活動は決めていないし,参加者も参加方法も決めていない.入居者ひとりひとりの希望をすべての職員で確認し,希望を話せない入居者は家族に確認し,集められた100の希望に基づいて活動を運営している.OT同士でインタビューもした,すべての職員にアンケートで業務を通して支援したい利用者の人生についても確認した.


その成果をボクは作業療法士なので作業療法の視点で分析し,チームや入居者や家族に語り伝える.過程ではいつも作業療法の視点で考える.作業療法の成果は,機能評価だけではなく,クライエントの個人的物語に関係する作業への参加度や参加による満足度で判断する.その実例を余す事なくプレゼンして,最後のスライド.


「特養ホームに作業療法士は必要ですか?」


特養ホームに作業療法士は必要です.法的には作業療法士である必要はありませんし,始めは職員と入居者にも必要とは言われないかもしれません.でも,認知症高齢者に作業療法は必要です.根拠となる実践報告は示しました.量的根拠も必要です.作業療法士が作業療法士らしくありたいと思うなら,誰かが働きやすい環境を整えてくれまで待ってはいけません.なぜなら,誰もやってくれないからです.私たちで,私たちのために,私たちに作業療法をしましょう.


老健の作業療法も同じことです.共同研究者を募集しています.(←案内へリンク)


私たちと社会のために,私たちで可能なことをやりましょう

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