2012年7月16日,札幌医科大学で弁当を食べながら,
科学哲学者の村上陽一郎によって書かれた,
「人間にとって科学とは何か」を読み返していた.
いつものところで目が止まった.
「環境問題,医療福祉などにおいて,専門家としての科学者だけに委ねず,
一般の人々も生活者の立場で参加し,考え,意思決定をすることが必要」
第16回日本作業科学セミナーに参加した.
勇気と元気を振り絞ってポスター発表をした.
特別講演に参加することも目的の1つだった.
記述に関わる作業科学,関連分野との作業科学,
予後に関わる作業科学,処方関連の作業科学を挙げた.
作業科学は作業療法を支えるために研究を生み出す,
と,まとめたように思う.
ルース・ゼムケ先生も同じように現状を整理し,
作業科学と作業療法の関係性について提案されていた.
そのためにまず,作業とは何か,科学とは何か,
理論とは何か,研究とは何か,と問いを立てていた.
近藤先生による佐藤剛記念講演が印象的だった.
葉山靖明さんへの面接を通して発見した事実について,
作業療法士として解釈,説明されていた.
さらに壇上で葉山さんとの対談.
作業科学に基づいた質的研究が,作業療法にどのように貢献できるのか.
というOS誕生と同時に生まれた疑問に,真摯に応えようとしていた.
専門家の解釈だけではなく,葉山さん自身の強いメッセージが,
作業療法士の主張,解釈を力強くサポートしていた.理想的だった.
懇親会にも参加した.
日本各地の作業科学研究会が壇上で活動報告と情熱を送っていた.
勧められて壇上に上がり,みんな家族だよ,と空気を読まずにしゃべった.
来年は福島で開催.次期開催に向けた挨拶で最後は締めくくれた.
侍OTさんの相棒,munakataさんが齋藤さんの熱い原稿を読んだ.
ボクは思わず感極まって少し泣いた.
セミナー終了後,チャンスがやってきた.
走って講師の前に立ちはだかった.
世界中の作業療法士に最も影響を与えるOTの1人である,
ゼムケ先生とピアス先生にADOCプレゼンをするために!
無理に休日を取って旅費交通費は自腹でもやりたい作業だった.
自然な文脈の中で作業についてのストーリーを引き出す,
と強調している作業療法と作業科学のリーダーは,
ADOCについてどのように反応するのか興味があった.
批判的な意見があるかもしれないと覚悟していた.
英語は全く話せないし,聴き取れないので,
助けてくれーと周りの人にお願いしながら,飛び込んだ.
「わお!これって素晴らしいアイデアだわ!エクセレント!
日本人って,COPMを使っても自分の意見を上手く表出できないからね.
こういうツールがあると助かる人は多いかもね.
あなたたちが開発したの?どうやってダウンロードすればいいの?
詳しく知りたいからHPがあったら教えてよ」
以上は後で友人に教えてもらったことで,
ボクはひたすらにADOC英語版のインフォメーションボタンを押して,
「ディス イズ!」と「オー,サンキュー!」ばかり言っていた.
そうかー,受け入れられているんだ,とは雰囲気でかなり伝わった.
隣に立っていたゼムケ先生の夫はエンジニアだと自己紹介した上で,
「本当に素晴らしいね.これは君らがプログラミングしたのかね?」と,
流暢な日本語で尋ねてきた.
いえ,レキサス沖縄という会社に依頼しました,とハキハキと答えた.
「わお!これって素晴らしいアイデアだわ!エクセレント!」
これだけは英語でも伝わった.
何度も親指を立て,しきりにADOCを操作していたので,よく伝わった.
作業療法士として,エクセレント!な体験だった.
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