でも,作業をやってみるまでは何が必要かわからない,
ということを去年から日常的に再確認し続けている.
先日のこと.初めてデイサービスを利用する方に,
リハビリテーションの目標と目的を一緒に決めたいと説明して,
同意を得ることができた.
「病院では男の人が腰から下,
女の人が腰から上を一生懸命に揉んでくれたよ.
1日40分ずつくらい,2ヶ月間ほぼ毎日」
「首と手がシビれて痛むし,上手く動かせないの.
2ヶ月でだいぶ良くなったわ.
だから,ここでも同じようにやって欲しい」
「ここね,転んだ時に痛めた.その時はね・・・.
病院では横になって,腕をこう動かしてね・・・.
家では自分で腕を動かす練習をこうやって・・・」
30分ほど経過した後に,
それでは腕が動かせるようになったら,
できるようになりたいことや,困っていること,
期待されていること,もっと上手くやりたいことは何ですか,と尋ねた.
「・・・いろいろあるんだろうけど,
そのためにも首と腕を揉んで欲しい」
昼食時間になったので,
続きは翌々日にすることにした.
その日が訪れて,ADOCを使って面接をした.
「そうね,低いベッドから起き上がる時に困るね.
首が痛むのよ.それから腕もね.
だから病院では横になって腕をこうやって・・・」
30分が経過した後,やりたい趣味を選択する場面になった.
園芸のイラストを見た彼女は,ハッと声をあげて表情を変えた.
しばらくして,静かにゆっくり,はっきりとした口調で語り始めた.
「庭の花木を育てることは,私の大切な趣味であり,仕事でもあったよ.
花と季節によって土と水を考えなければいけないし,
寒さや風から花木を守るために,自分で大工をして箱も作った」
「80歳を過ぎるまで,ずっと花の世話を大事にしてきた.
でも転んでしまってからは,孫たちが危ないと心配をする.
世話になっている孫に迷惑はかけれないから,今はやっていないのね」
「でも,ほんとうに私は,花を育てることが楽しみだったし,
好きだった.今になって思えば,それが生きがいだっと思う.
いつかはまたやりたいとは思うけど,それは言えないと思っていた」
他の職員とも協力して,痛みが少なくなるように治療的な支援をします.
腕がもっと動かせる可能性があるなら,最大限の手伝いをしたいです.
でも,私たちにできるのはわずかな時間であり,ごく一部のことです.
あなたが,自分の意思で自分の身体と心と頭を動かす生活が,
習慣化されるようになったら,それもリハビリテーションです.
花を育てることが生きがいだったなら,取り戻すことがリハビリです.
完璧に動きを取り戻すことや,継続して痛みを取り除くことは難しくても,
あなたが自分で自分の生きがいを取り戻すことは,可能だと思います.
そしてあなたの家族も,期待しているのではないかと思います.
花木を育てるために,どう工夫すれば腕を使うことができるのか,
安全に楽にできるだけ1人で,好きな時間に好きなやり方で,
花を育てることができる方法を,あなたと一緒に考えます.
家族の方と話し合う機会と,実際に庭で花木を育む場面を観察する機会を,
職員に相談して設けてもらいます.
その時に新たな課題や目標が見つかれば,その時に修正しましょう.
あなたが30分以上も楽しそうに語ってくれた,
花を育てる生きがいができるように,
わたしたち職員全員で手伝いたいと思っています.
私は,作業療法士といいます.
はじめまして、兵庫県神戸市の東川と申します。私はADOCをはじめたばかりです。先生のブログから学ばせていただいてます。
返信削除単純な質問で恐縮ですが、高齢者対応ではiPadminiは一覧表示が見にくいと言うことはありませんか?iPad2にしようかと考えておりますが。
東川さま,コメントありがとうございます.
返信削除質問にお答えします.
一覧表示はiPadと比較するとminiは見えにくいかもしれません.
しかし,イラストを拡大することで十分に対策は可能でした.
ADOC以外にどのように使うかによって,
どちらが良いのか決まるかもしれません.