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2011/05/15

話を聴く目的と目標 Hear the goals and objectives

先日、意思の疎通が困難な100歳を超えた特養ホームの入居者の
家族とゆっくり話ができる機会があった。




1.まず始めに

「固まった関節は元に戻すことはできませんが、
その予防のために多少は効果があると思われる関節を動かす訓練を
マッサージ師を中心に実施しています。」

「私が考えていることは、何のために関節が固まらないようにするか、
ということです。考えつくのは、車いすの姿勢が崩れず、痛みが生じず、
ある程度の時間を過ごすことですが、それも何のためかなと思っています」

「痛みや不快感があれば、それを取り除くことは大切なことかもしれません。
それでも、それも何のためなのかなと考えています。
痛みと不快感がなければ、もうそれですべての支援は達成したのかな、と。
そうじゃないんじゃないかなと、個人的には思っています」

「痛みがなく安楽に、滑り落ちることや床ずれもなく安全に、
車いすに座れたとして、食事の時間以外に、
受け身的に参加できる活動があればいいなと思っています。
それは高齢者だからとか、男性や女性だからとか、介護が必要だからとか、
それだけじゃなくて、この方だけの思い出とか気持ちを揺さぶるようなことが、
いいんじゃないかと思っています」

「もう聞こえてないみたいで、見えてないようにみえますが、
なんかやっぱり感じることはあるかもしれないと思っています」

「それから、ご家族が考えている、こんな生活して欲しいということを、
できないこともありますが、できる範囲内なら、できたらいいな、と。
このことは、頭と体に関する専門知識だけでは知ることができないので、
どうしてもご家族に確認したいことだったのです」

2それでは本題

「この方は、どういうことが好きでしたか。どんな趣味がありましたか」




始めに話すべきことを話さずして、いきなり本題に入ってしまって、
特に何もないですと答えたので希望なし、というのは
違うんじゃないかと強く思う。何を聴くかよりも、なぜ聴くのかが大切。

それでも特に何も思い浮かびません、趣味はない母でしたと、
ある入居者の息子さん夫婦は話した。
そこでADOC(作業選択意思決定支援ソフト)で話を進めると、
その70代の息子さん夫婦は一緒にiPadを操作しながら話した。

「あ〜そういえば自宅の庭で野菜を育てるのが好きな人だった。
花も育てていたね。何でも自分で育てる人だったよ。
会話ができた数年前は、故郷に行きたいとしきりに話していたな」

そこから、どんな人だったのかという話を詳しく聴くことができた。
詳しい話を聞いておけば、支援の内容を考える時に
妥協してはいけないこと、妥協してもよいことが明確にわかる。
これは支援する側が自己満足に陥らないために、とても大切なこと。
その話は今回の場合、話を引き出すきっかけがなければ確認できなかった。




きっかけを生み出したのは、話を聴く目的を説明したこと、
わかりやすいイラストの中から選択できたことだったと思う。

ADOC is 文脈を発見する眼鏡

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