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2018/07/24

#第5回COT 

昨日,空港が到着機で混雑しており,二十分ほど上空で旋回して順番を待っていた.機内のテレビからニュースが流れていた.歪んだ優生思想が動機で起こった知的障害者施設の十九名殺傷事件から二年経過,大雨洪水で校舎が使用できない児童らは他校での合同授業を再開,介護疲れと思われる理由で七十四歳男性が九十七歳の母親を殺害.録画なのか,幾度も事実が通り過ぎて再び現れた,殺傷,再開,介護疲れ.前進も後進もせず,機体はぐるぐると回った.

今日,職場に戻ると新しい実習生たちが待っていた.いつものように面接すると,自分は作業療法士に向いていないと,悲痛そうに訴えていた.今までにどんな経験を重ねたのかは,わからない.彼女たちの自己評価は正しいのかもしれない.それでも作業療法士になりたいのかと訊ねると,涙目でハッキリと頷いた.それなら僕らが支援するから,何一つ心配するなと諭した.もしも,不安は何もないと答えたなら,現実の厳しさに直面させるつもりだった.

先週末,福岡で開催された第五回日本臨床作業療法学術大会に参加した.印象に残ったのは二つ.一つは事例報告や研究会活動を通した成功体験の満足感よりも,支援できなかったことに対する後悔と解決に向けた強い意志を語っていたこと.もう一つは非常に制限された法制度に失望しながらも,決してあきらめないと韓国のベテラン作業療法士が宣言していたこと.どちらも夢物語ではなく,現実的に実現可能な目標と手段を掲げていた.

いつか,僕らが解決したい課題は限りなく広く,深く,暗い.あらゆる人の潜在的な能力が活きる機会を創りたい.一つの目的地に向かって,臨床と研究という異なる手段で突き進む.どの入り口から進み始めても構わない.ペースとコースは決められていない.僕らは誰にも強制しない,誰にも屈しない.光で目が眩んでいる人を見かけたら,僕らが闇へ連れて行く.闇の中で動けない人と会ったら,僕らが決して消えない光になる.五年前に決めた覚悟だけは変わらない.