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2013/12/18

生活期リハビリテーションの効果についての評価方法

平成24年4月の介護報酬改定においては,「自立支援型サービスの強化と重点化」の観点からリハビリテーション,機能訓練の充実が図られた,ことになっている.ただし,リハ専門職と介護職の連携強化など生活期リハのあり方は検討するべきとされており,さらにリハ効果の評価手法について検討することになっていた.

平成24年度介護報酬改定の効果検証および調査研究に係る調査の結果(最終版)が,平成25年9月4日に厚生労働省の介護給付費分科会からHPで公開されていた.

要支援者.要介護者のIADL等に関する状態像とサービス利用内容に関する調査研究事業や,認知症の人に対する通所型サービスのあり方に関する調査研究事業,介護サービス事業所における医療職のあり方に関する調査研究事業など11事業についての最終報告書になっている.

それぞれの事業報告書は100ページ以上にわたるが,最終報告書は簡潔に各事業報告がA4用紙1枚に整理されている.今回は生活期リハビリテーションの効果についての評価方法に関する調査を紹介しますよ.



調査の目的は生活期リハビリテーションのアウトカム評価に活用できる可能性のある11指標について評価・検討し,生活期リハビリテーションのアウトカム評価の可能性について検討すること.対象は全国老人デイ・ケア連絡協議会などの推薦によって選ばれた49事業所で,回収率は100%

これらの事業所より同一利用者について2ヶ月毎に3回評価を実施.利用者は500〜600名.調査の実施後に通所リハ,通所介護,訪問リハの各1事業所に対してヒアリングを行い,本調査で評価を行ったアウトカム指標についての意見や感想を収集.

面白そうでしょ.ちなみに事業報告をしているのは三菱総合研究所.結果に移る前に,最終報告書には記されていない11のアウトカム指標を確認しましょう.それは高齢者生活機能調査基本チェックリスト,Life-Space Assessment,要支援者等の活動能力指標,手段的日常生活動作検査(Lawton IADL),基本的日常生活能力(Barthel index),機能的自立度評価表(FIM),意欲(Vitality Index),情緒・気分・高齢者抑うつ尺度(GDS-15),健康関連QOL(SF-8),長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),Zarit 介護負担尺度日本語版 短縮版でした.


さて,結果です.


「通所リハについて,いずれに指標においても,1回目→2回目→3回目に継続的に改善または悪化する傾向はなく,また変化の水準も小さいことから,これらの指標によって生活期リハビリテーションの効果を評価することは困難であることが示唆された.なお,通所介護および訪問リハにおいても同様の結果となっている」






・・・効果を調べるための調査ではなく,効果の評価法を探すための調査だったので,このように解釈されています.結果だけを見るとショックですが,興味深いです.リハ内容は議論されていませんので,この結果ですべての判断はできないと思う.ちなみに,関節可動域,筋緊張,筋力の評価は指標の中に入ってません.



各評価指標における変化の妥当性について

「『適切な連携の基で急性期・回復期リハ病棟からの退院者については,改善する利用者が多い』といった限定的な条件での変化について検証.この条件であれば,FIMはリハ効果を捉える可能性があると判断」・・・ごもっとも.


各評価指標と生活期リハの効果との関係性について.

「4ヶ月という短期間で効果の判定を行うことは難しい.専門家らは身体状況等を『維持』できることも十分な効果であるとの意見も挙げられた」

・・・んー,目的と目標のないサービスを正当化する可能性があると思いました.

繰り返しますが,今回は提供したリハビリテーションの内容は定義されていません.たぶん.研究のことはあまり分からないのだけど,リハ効果の判断基準となる指標を模索するなら,リハ内容の定義は大事だと思う.CI療法(Constraint-induced movement therapy)のようなエビデンスが保証されている介入なら,今回の結果は変わったでしょう.そうなると,通所リハと通所介護という機能分化の形態も変わる可能性がある.預かり型,自立支援型,機能訓練型に分かれるかもしれない.

どれが正しいか,良いかという議論ではなく,サービスが類型化されるということ.続きは次の機会に.


最後にもう1つ.


「生活期リハビリテーションの『効果』そのもの定義を検討するべきという意見が多かった.例えば,個別計画において位置づけられているような『地域の中での社会活動に参加ができるようになる』,『目標としていた場所に行くことが可能になる』といった目標の達成は,身体状況等の改善がなくてもできる場合もある」

・・・あ!




ADOC


それから生活行為マネジメント表(簡易版),COPM,OSA-Ⅱとか他にいろいろ.個人的にはOPAがイチオシ.作業療法の評価は,この課題に貢献できる可能性があると個人的には思う.それはボクが作業療法士だからそう思うだけのことかもしれないけど,そうだとしても提案や意見は構わないよね.むしろ専門職としての意見を提案できるからこそ,専門職としての存在価値があるんじゃないかな.だよね.


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