料理は毎週やっている
園芸は毎日やっている
やっていることを観察しても,意味は見えない
春さんは腕をマッサージしてくれるだけでイイと語った.
ADOCを使って面接すると,庭で転んで上腕骨を骨折して以来,
自宅で園芸ができなくなったことが悲しいと話した.
夏さんは高齢者マンションで独り暮らし生活が長い.
訪問介護士と恊働して料理や掃除をしていたが,
ADOCで評価したところ,簡単な料理は自分でやりたいと話した.
秋さんは娘家族と2世帯住宅で暮らし,料理以外はすべて自立していた.
支援担当者会議でADOCの評価表を囲みながら面接の続きをすると.
自分のために料理をする気が湧かないと話したが,
娘とケアマネ,訪問介護士は一緒にやって欲しいと話した.
冬さんは娘と同居しており,生活行為はすべて自立していた.
自宅では寝てばかりで,記憶も曖昧になってきたと娘は不安を訴えていた.
ADOCで面接すると.誰かにとって役立つことをやりたいと話した.
春さんと夏さんが通所介護で育ててきたネギの収穫をしようと提案してきた.
このままじゃネギがかわいそうじゃないの,と.
必要なことならやってください,と作業療法士は伝えた.
春さんは杖を置いて椅子にもたれながらハサミを使って,
ネギを収穫しながら肥料と水をもっとあげるべきだったよ,と話した.
温かくなる前に次はゴーヤーを育てようと彼女たちが提案した.
夏さんは歩行器から離れて椅子に座って手とハサミを使って,
ネギを切りながらヒラヤーチー(沖縄のチヂミ)を作ろうと話した.
小麦粉と卵は準備できるかと尋ねたので,すぐに用意できると伝えた.
その日は通所介護の料理予定日ではなかった.
活動担当の介護士,責任者,栄養士へ事前に許可を得る必要があったが,
ADOC評価表を眺めながら提案すると,すべての介護士と相談員が賛同した.
夏さんがみんなをリードしてネギを刻み,
秋さんが自らフライパンを握り,
冬さんがみんなのために料理を切り分けた.
刻んでいたのは,料亭で働いていた頃の自分を結ぶ時間
握っていたのは,炊事で貢献してきた家族との関係
分けていたのは,障がい児施設で働いていた頃と同じ純粋な心遣い
思い出のある過去とつながり,暮らしてきた人々と関係することを,作業と呼ぶ.
性別,年齢,疾患,ADL介助量,活動の種類では,
作業の意味は見えない.
それは本人さえも簡単には発掘できないところに埋まっている.
クライエントが自ら見つけた時,他の人々やすべての支援者が結びつく.
場ではなく,時間でもなく,機能的効果でもない.
個性的な物語で結びつく.
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