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2013/06/10

作業療法を伝える過程

沖縄で作業科学セミナーを開催した時,通訳を依頼した専門家に,
「人は作業的存在であるって価値観は理解できますか」と友人が尋ねると,

「哲学者は哲学的存在,経済学者は経済的存在,社会学者は社会的存在,
と人のことを捉えている.むしろ,そのように言い切った方が,
学問の基盤にある考え方を理解しやすいから,コミュニケーションしやすい」

と答えたらしい.すっきりした.






作業療法士って,

納得する役割が獲得できるレシピを作る専門家だと思う.
鍛える人,教える人,してあげる人というよりは,
自らできるように支援する人っていうのが,個人的には馴染む.

いきがいのまちデイデイサービスつむぎのプレゼンを手伝っていた.
1つはドリームプランプレゼンテーション沖縄大会,
もう1つは創造的な中小企業を支援するか判断する会場.

共通した3つの特徴は,
対象が医療福祉保健の専門家たちではない,
内容が優れていれば経済的支援を獲得できる可能性がある,
まだ実現していない将来を見えるように伝えること.


覚悟はしていたけど,想像以上に厳しかった.


信念,と呼んでいいくらいの想いを,
自分たちで多角的に,容赦なく,批判的に見つめたつもりだったけど,
プレゼンの事前演習で受けたサポーターからの質疑はさらに鋭かった.

表現は優しさに満ちた意見や助言だったけど,シンプルに言ってしまえば,

「手段に根拠はあるの?」
「個人や社会の幸福は何をもって判断するの?」
「それで,金になるの?」






プレゼンターのtamuraくん,haradaくんはボクと違って,
治療家として一流の技術を身につけている.
だから,「人は作業をすると健康になる」って前面に出さない方法も選べた.

むしろ,その方が伝えやすいし,伝わりやすいのに,選択しなかった.
それでは伝える意味と価値がないと判断していたんだと思う.
それに,伝えるために模索する過程もまた,伝える目的だったはず.


作業療法はこれだ!


っていう,誰にでもわかる,誰もが納得する,自分も納得できる,
完璧なキャッチフレーズを求めていたのではないと,わかっていた.
時間をかける必要があることも,成果を保証できないことも覚悟していた.

どちらも終わってみて,プレゼンの成果としては十分な評価を受け,
これからさらに効果を知る機会に恵まれるだろうと思う.
それでも彼らは満足はしていなかった.

一番伝えたいことが,まだ届いていないと感じているみたい.
でも,焦燥や失望の色は浮かんでいない.
彼らはクライエントの言葉と表情を覚えているからだと思う.


迷いなく,悩んでいる.


「手段に根拠はあるの?」
「個人や社会の幸福は何をもって判断するの?」
「それで,金になるの?」

という鋭利で悪意のない声に,
怯まず,避けず,流さずに向き合う過程にこそ,
伝えることの目的が潜んでいることを彼らは知っている.






作業をすると人は健康になるって,
やたらめったら熱く主張するだけじゃ,
聴き手がさーっと引いてしまう音も一緒に聞いたことがある.

作業をすると人は健康になるよって,
手段の根拠を示し,幸福の判断基準を見える化し,
社会的に認められるように,自分たちにできることも続けたい.


老健RCT共同調査者の募集〆切までもう少し


この研究で期待している成果が表れたら,すべての課題が解決する訳ではないけど,
伝えやすさ,伝わりやすさが変わる,
以上の変化が起こるんじゃないかと思ってる.

2013/06/06

OTのストーリー・テリング

悲観主義は感情によるもの,
楽観主義は意思によるもの.

アラン.幸福論





先日,沖縄臨床作業療法実践研究会でちびっこOTさんと講師を担当した.
沖縄OS研究会,沖縄OB研究会,沖縄OT教育法研究会を統合して,
2013年5月から活動開始の団体 → 沖縄臨床作業療法実戦研究会HP

平日の夜に琉球リハビリテーション学院で開催された勉強会は,
交通の不便さもあって参加者は10名くらいかなという予想を超えて,
31名の作業療法士と23名の学生が参加されていた.

研究会を統合した理由はそのうちに書き綴るとして,
2人がプレゼンした後に展開したワークショップがおもしろかったのでメモ.
ちなみに,ちびっこOTさんは生後間もない三男を抱っこしながらプレゼン 笑






小学校での作業療法実践も,介護保険施設での作業療法実践も,
病院での作業療法実践と本質は何も変わらないとボクらは思っているし,
OTって伝えにくいと悩むことは2人とも病院勤務時代にあったし,今もある.

悩む人だけで愚痴を言い合って終わるだけの会なんて存在価値がないから,
何のために伝えるのか,とプレゼンの目的を考えていた.
それが,自分で自分の環境を変える能力と知識を獲得してもらうこと.

ワークショップは均等に学生が配置されるよう6〜8人に分かれて2つのテーマ
①臨床で作業療法を実践しようと思う時にぶち当たる壁,
②ぶち当たった壁の乗り越え方,あるいは乗り越えた状態



臨床のOTは学生が同席することで抵抗があるんじゃないか,
学生は臨床OTの悩みを聴いて失望するんじゃないかと不安があったけど,
隠すよりも共有する価値の方が大きいと思った.

反省や問題解決型のサポートはやる気を低下させたり,
エネルギーと信頼関係をムダに奪う危険があると思う.
必要なことは「作業」の目標を決めて,明らかな優先順位を共有すること.

今回のワークショップは半年後くらいに完結するイメージなので,
臨床でクライエントと初めて会った日の面接に似ている.
参加者と研究会がパートナーになれるかは,次回が鍵になってくるかなー






なりたいと思う将来についてストーリーを語ってもらうことが大事だよなぁ.
クライエント,OT,学生の時と同じで,ボクが話すことは3つだけ.
「何がしたい?」,「なぜしたい?」,「どうやればできると思う?」


あ,それと「イイね!」