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2017/06/28

第15回沖縄県作業療法学会  学会長講演(35分)





山梨の富士温泉病院で,
実習地を訪れた奥村先生と中庭にいました.
作業療法で学ぶべきことは限りなく広い範囲で,どこまでも深い.
それに比べれば学生と教員,バイザーのは,
とても小さい.
事実を知っているか,知らないかの差は大きい.
意味がわかりませんでしたが,
10年後に気づき,15年後に理解できました.








まず過去を把握しましょう.
学会の前身には研究大会があり,
第8回まで開催されていました.
2001年は回復期リハ病棟,
それと介護保険制度がスタートしました.
彼らは作業療法士という職種を説明し,
臨床,管理・運営を兼任して県士会運営,
研究発表,学会運営に携わっていました.
第8回研究大会の時は190名の会員数で実行委員45名,演題数42本です.
互いを成長させるために力を尽くしたのです.
その時期があってこそ,今日です.




彼らは何を見ていたのでしょうか.
将来的に作業療法士がさらに能力を活かして
社会貢献できるように,
人,制度の環境をコントロールできるよう
助け合っていたのです.
もし県士会と学会を解散したとしても,
いずれ有志で集まって再び組織化するでしょう.
なぜ私たちは今日ここにいるのか.
考えてください.





現在の私たちを考えましょう.
この後,県士会総会に出席してください.
職場の業務を遂行しながら会員のために
理事は何を考えているのか,
会費を何のために,どれだけ投資しているのか.
意図を読み取ってください.







未来について考えましょう.
20年前,沖縄県内OTは250名が需要の飽和点で,
それ以降は供給過多と考えられていました.
現在,800名近いOTが県内で勤めています.
希望すれば就職率は100%です.
介護保険領域ではかなり不足している状況です.
まだまだ市場に必要でしょう.








未来は現在の延長ではありません.
働き方,暮らし方はこれから変わります.









自動化されない職業の上位に
作業療法士はリストアップされています.
他の上位にはレクリエーション・セラピスト,
メンタルサポーター,義肢装具士など,
作業療法士と関連する職種があります.







機械に変われないから安心かと言えば,
そうではありません.
自動化によって消える職業もあるでしょうが,
それは緩やかな変化です.
職業が消えることより先に訪れるのは,
タスクの自動化です.
予測可能な労働の割合は職種で異なります.







機械やIT,AIが自動化した時間を,
私たちは寝て過ごすわけではありません.
人間にしかできない,
付加価値の高い創造的な仕事に専念できます.
職種で仕事内容が決まらない時代になります.







遠い未来の話ではありません.
2025年から2030年の間に,
テクノロジーの爆発的な成長が始まるようです.
人工知能は人工知能を作るからです.







政府はAIやロボット産業の市場を
5年で4倍にする計画を立てました.
人間の強みや働く場が失われると,
感じる人もいるかもしれません.
でも社会,企業の新しい課題を発見することで,
解決する人材,素材が新しく必要になります.







テクノロジーを活用する目的は,
楽をするためではありません.
AI分析,IoT,ITを活用することで,
オーダーメイドの道具やサービスを,
安く,早く,安全に利用できます.
クライエントの利益を望むのであれば
受け入れてください.変化を,自由さを.







テクノロジーがすべての社会,個人の課題を
解決するわけではありません.
障害や状況,目的,環境,役割に合わせて
課題を解決する機器の選択が必要です.
機器やサービスを使えるように段階付けの支援が必要です.
行動心理学や発達心理学,集団力動学,運動学,社会学などの知識を持ち,
人と作業と環境の相互作用を理解している
作業療法士は活躍できます.







人々の暮らし方と働き方が変わるのであれば,
作業療法のあり方も変わります.
病院や施設に閉じこもるのではなく,
生活の中に飛び込むのです.
社会が求める役割に適応するのです.









変化するのはテクノロジーだけではありません.
明治時代の工場勤務者を管理するために,
制定された労働基準法が変わります.
少子高齢化に伴い経済規模の縮小化が及ぼす
将来的な影響を予測し,
柔軟な働き方ができる制度改革へ向けた一歩が
すでに始まっています.
非正規雇用,残業への対策が注目されますが,
ITを活用した在宅勤務や副業・兼業を
実現の制度策定も注目してください.
社会的弱者の支援することが主目的ですが,
作業療法士の働き方も変わります.









社会が効率的,効果的な体制へ変わるので,
医療,介護,保健サービスも変わります.
領域を横断して小さい組織が,
時間や場所の制約を超えて,
より早く,シンプルに,行動できます.
期待されるのは専門性の高い技術や視点です.
誰でも替わることができる仕事ではなく,
領域に特化した武器が求められます.
役割を理解し,学習し続けて適応するのです.
みなさんが日常的に実践している仕事には,
価値があります.
さらに高いレベルまで技を磨いてください.
作業療法士であっても,代用できないレベルに.










職場の仕事だけではなく,
やりたかったことをやってください.
楽に真似できないレベルで.
やりたかったことはあなたの中に.
ADLに介助が必要な状態で在宅復帰して,
妻が認知症で家事もできずやることもなく,
娘は知的障害があるため作業所で働き,
コーラ代を稼ぐために身体を売り,
一家の生活を支える手当は叔父が奪い,
彼は心臓が悪いため働く機会に恵まれず,
さらにその子供はいじめで学校へ通えず
・・・特別なケースではないですね.
臨床で関わったことがあるはずです.
無関係ですか,無関心でしたか.
どうにかしたいと,願いましたね.
他職種と有機的に連携することで
解決に近づけますが,
作業療法士独自の知識,技術は貢献できます.
仲地さん,坂本さん,中野さん,仲間さんが,
証明してくれました.










すべての課題を一人で解決するのは難しいです.
個々人が高いレベルで治療,支援できることを
前提にした上で,チームワクークが必要です.
人々の暮らし方と働き方が変わるのであれば,
作業療法士も働き方を変えるのです.
個人が望んでいなくても







これから15年で変わると言いましたが,
変わらないこともあります.
人の潜在的な能力を活かす機会を創るため,
人的,物理的,制度的な環境を
コントロールできるようにOTは支援する.
その手段としてのADL,家事,趣味,仕事へ
適応する技術を提供する.
建築家,教育者,モノづくり職人,行政,
芸術家,医療従事者,エンジニアなど,
領域を横断して協業する支援のあり方は
10年以上前に海外で実践が報告されています.
作業療法士の本質は,
時代や文化,制度によって変わりません.






田村浩介さんたちと勉強会を発起したのは,
今から13年前です.
伝えていることの本質はまったく同じです.
MTDLPやADOCの登場によって,
今では話を聞いてくれる人が増えました.
当時は誰も相手にしてくれませんでした.
それでも学びをあきらめたことは,
一度もありません.
臨床でクライエントの変化を知っていました.
孤独でも研鑽を継続していたことで,
知識,技術を必要とする人へ提供できました.








縁や支援もあって日本各地の方々と繋がると,
同じように前進してきた人と出会います.
自分と出会ったような感覚です.
成長に影響を与える繋がりは,
一気に広がり,予想以上に深まります.
その中で「沖縄はすごいよね」と言われます.
戸惑います.
私たちはもっと地縁を活かした,
ネットワークを構築できるはずです.
ひとつのチームになれる可能性があります.
人間関係がシンプルで,顔がわかる規模で,
地縁と立地条件を活かせば,
未来へ先に挑戦できます.
日本を追いかけているアジアの国々へ,
沖縄モデルを提唱することも可能です.



 



私たちは異なる職場で働いています.
でも沖縄で暮らす人々へ対して,
健康的でその人らしい生活を支えるという目的で
一緒に働くチームです.
職場に多職種が存在しているように,
それぞれが強みを借りあって働くのです.
福祉用具,徒手的治療技術,就労支援,
住環境支援,面接技術,芸術療法的支援.
強みを持つ職場同僚と同じように,
私たちも技術や知識を共有しましょう.







今回の学会運営は直接会って会議を開かず,
Googleドライブを使ってクラウドで
すべてのデータを全員で共有しました.
連絡・相談・報告はLINEを活用しました.
顔を見てたい時はFaceTimeを活用しました.
若手中心の実行委員50名に対して,
新しい学会運営のあり方を提案するためです.
シンプルに,早く,行動的になれる方法を
模索し続けて欲しかったからです.
今回の運営法に反省点は上がるでしょうが,
やってみなければわらかなかったことです.

課題と影響が明確になれば,
改善し続ければいいのです.
それぞれが研究会や学会を発起し,
方法をアレンジして共有できれば,
効率的で効果的な自分と組織を発展させる方法が
いつか見つかるでしょう.
このLINEグループを今日からオープンにします.
参加したい方,誘い方は出入りしてください.
情報収集,共有したい時に使ってください.
新しいグループが発展するかもしれません.
今日で消えるかもしれません.
わかりません.まず,やりましょう.






あなたが臨床や研究活動で培った
知識,技術を必要としている人がいます.
彼らとすべてを分かち合ってください
あなたが持っていないものを彼らは持ってます.
それを分かち合ってくれます.
仲良くなろうと提案していません.
必要な時に力を借り合う関係を築きましょう.
未来の自分と社会が,より良くなるために.



枠から出てください.
あなたが望むなら,
ここで暮らすあなたの家族や友人のために.
できること,やるべきこと,やりたいことを.
今日ここに参加している210名,
仕事や家庭の事情で参加できなかった仲間が,
一緒に歩みます.








新しい当たり前を,共に創りましょう.