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2013/05/27

急性期から生活期までのADOC研修 in 九州

ごっちゃんです.
3日間で人間はどれくらい大きくなるか検証し,予想通りの結果になりました.
お腹パンパンですが,それよりも胸いっぱいです.






まず5月24日に西九州大学で認知症ケア研修会として,
ADOCショータイムを披露させて頂きました.
平日の夜にも関わらず100人以上の参加者で会場は熱気に溢れてました.

半分は作業療法士,半分は相談員など福祉関係者ということでした.
参加者の職種と目的は概ね予測していたので,
作業療法という言葉は使わず,作業療法をプレゼンしました.

メニューは結び花,手工芸先生,10年おでんのスペシャル版.
研修会後の懇親会で参加者に言われましたが,確かに自己陶酔してました笑
自分をコントロールしようと努めてはいるんですけど,感情が溢れてしまう.






作業に焦点を当てた支援がなぜ必要か,どのように支援するか,は
別のチームメイトが担当しますので,
私の担当はやってみたい!と感じてもらうことです.

見苦しいと感じた方は,どうかお許しください.
でも,研修会の後にあれほど長蛇の列で並んでくださり,
挨拶や相談を受けたのは初めてです.佐賀,福岡は熱くて優しか人が多かったばい.

懇親会ではすてきな出会いもありました→tomoriくん,つぶやく
やってみたいと思ったら,まずやってみること.
これは他人が影響を与えることはできないので,私たちは期待するだけです.


→ 老健での共同研究者を,まだ募集中です


翌日,5月25日は巡業のメインイベントで,
福岡医療団という医療法人のリハ職員研修会に参加しました.
急性期,回復期,療養,訪問,緩和ケアのOTが主な参加者です.

そこに勤める2人の若い友人からの依頼が始まりでした.ちょうど半年前です.
まず1ヶ月かけて,研修会の目的と目標について,繰り返し問いを立てました.
何度もメール,電話,Skypeで問いを掘り下げました.


「患者さんにとって目的と意味のある訓練,練習,支援を提供して結果を出し,
患者さんがやりたいと思っていた希望の実現に関わったすべての職員が
仕事を楽しいと感じ,自分も思い描く仕事の実践を通して幸せになる」


これを目的として,目標はさらに状態,時期,対象をイメージしました.
それから構成を練り,3時間一方的に講師が話す研修会ではなく,
参加者がプレゼンできる研修会にしようと,目的に合わせて必然的に決まりました.

急性期,回復期,療養,訪問,緩和ケアの新人から若手のOTに協力してもらい,
介入に悩んでいる事例を選択し,4ヶ月かけて評価,介入をサポートしました.
4ヶ月後の当日,成果を保証できないので覚悟が必要なチャレンジでした.

当日,まず私が回復期リハ,通所リハ,特養で実践した,
作業に焦点を当てた支援を報告し,その後に50名の参加者でADOCワークショップ.
ワークショップでは質疑もたくさん頂き,熱気を肌で感じました.






「手順が正しいのか不安がある」という声が多かったのですが,答えは簡単です.
開発者たちは自分をコントロールしようと努めますが,
他人にコントロールされるのは死ぬほど嫌いです.他人に対しても同じです.

セラピストが自由にADOCを使ってくれることが,
開発者たちの望みんです.
たった1つだけ求めていることは,クライエントの話をよく聴くことです.



最後に法人内のOTたちによるADOCショータイム.こちらがメインです.
評価,介入だけではなくプレゼン方法についても徹底的にサポートしましたが,
プレゼン技術よりも内容が重要なことを知っていたので,不安はありませんでした.


「ほんとうにイイ事例報告だった.同僚が誇らしい」
「同僚がこんなにイイ介入ができるんだったら,自分も出来ると思えた」
「こんな仕事をしていたなんて,一緒に働いていても気がつかなかった」

「自分も明日からすぐ行動に移してみようと思う」
「急性期でも意味と目的のある訓練を提供することは可能だとわかった」
「何をするかよりも,なぜするのか,明日からいつも考えるように意識したい」


プレゼンが終わって多くの同僚から頂いた言葉だと,彼女たちから聴きました.
もし,私が1人で3時間も話し続けたら,3ヶ月で忘れる感心だったでしょう.
今回はずっと忘れることがないでしょう.事例の笑顔を知っているからです.

興味深いのは,
「機能訓練のための訓練ではなく,やりたいことを実現するための訓練を提供したい」
と語ったのはOTだけではなく,PT,STからも声が多かったということです.






懇親会で部門責任者の方が,
「うちは活分に力を注いでいるので,始まる前はどうなるか不安があった」
と話してくれました.

ADOC projectは,日本臨床作業療法学会は,私たちは,
クライエントが大事にしている役割や自分らしさを実現することが重要と認識しており,
そのための手段は問わない姿勢が日本型作業療法だと考えています.

治療的介入や徒手的介入が作業療法かと問うことに,価値を感じていません.
何をするかよりも,なぜするのかを大事に思っています.
不安を抱えている人の背中を蹴飛ばすようなマネは,脅されてもしません.


なぜなら,私たちは作業療法士だからです.


自分が思い描くような仕事や学習ができるようになりたいと願う人がいるなら,
私たちは正しいかと裁くのではなく,できるように一緒に考えるのです.
自ら問題を解決できるように,互いに支援するのです.

もちろん私たちは,すべての課題に対して何かができるわけではありません.
作業を大切にする作業療法の評価と介入に関することは,一緒に学べます.
知識や技術を一方的に与えたり受け取るのではなく,対等な関係を求めます.


まずやってみる!という行動力さえあれば,誰でもチームメイトです.


なんて酔っぱらって口から言葉をポロポロこぼしながら,
あれ?いまボク,カッコいいこと言いましたよね.ヤバいっすねぇ,えへへ
とバカなこと言いながら2日目も朝を迎えて,胸いっぱいでした.

2013/05/18

いのちの芽

骨髄バンクに登録して10万人に1人という確率.
2回目の骨髄ドナーに選ばれた.
1度は提供できなかったので,選ばれたのは3回目だよ.

手術室に入ってから隠し持っていたiPhoneを取り出して,
術中に記念撮影をお願いしますと,つぶやいてみた.
・・・言ってみるもんだね.

取り出した命の芽が必要な誰かに届いて,
しっかり根ざしているといいなぁ
もし何かあったとしても,少しでも希望を抱けますように.






ボクが8歳の時に親父が膵臓がんを患い,
5年生存率は20%以下と宣言されていた.
ボクの娘が8歳になり,親父は今でも過剰に元気で150歳まで生きそう.

いま,県外の終末期医療で働く作業療法士たちの介入について相談を受けている.
担当する対象者はほとんどが,自宅に帰ることがないという.
対象者も家族も専門職も,強い精神力だといつも思う.

作業療法で提供することは疾患や症状に関係ないと個人的には考えているけど,
終末期医療だけは特別な環境だと思っている.
明日のこともわからない状況で,誰もが不安からどうやっても逃げられない.



ADOCを使用して対象者や家族から希望を引き出して,
病棟から車いすのままスナック街へ外出して酒を愉しんだ,
通所で点滴台を持ちながら家族も一緒に社交ダンスを踊った,
病院から酸素ボンベを担いで釣りに出かける準備をした,という作業療法士たちがいた.

ボクもそこまで思い切った支援を経験したことがない.
クライエントに必要があって実現が可能と判断したからやってみようよ,と
知恵と勇気を振り絞ったOTとチームメイト,家族が尊い.

基本的に,1回のイベントでは終わる支援はあまり良くないと考えている.
対象者と家族が望む時に,望む場所で,思い描くように望むことができるよう,
自分たちで環境と機会をコントロールできる支援をした方がいいと思う.



終末期に携わる場合は,少し違うと考えている.
作業療法の対象は,必ずしも患者さん,利用者さんではない.
対象者を家族と考えることもできる.

患者さん,利用者さんが亡くなって5年,10年が経った後も,
家族が大事に抱けるようなエピソードを一緒に作ることも,
作業療法じゃないかとボクは思う.

もし,患者さんが実現したかった希望に届かなかったとしても,
できる限りは向かおうとしたという事実はそのまま残るだろうし,
解釈を変え続けて成長していくかもしれない.






特別なことをやらなくもいい.
特別な意味があればいい.
作業の芽が必要な人の心に届いて,少しずつ根を広げ,いつか花が開くといいなぁ


2013/05/16

通所介護とOT


このブログに辿り着くまでの検索ワードで一番多いのは,
理学療法,理学療法士だった.
じつはボク,琉球の作業療法士です.

平成23年度厚生労働省老人保健事業促進費等補助による,
「デイサービスにおけるサービス提供実態に関する調査研究事業」の
報告書が三菱UFJリサーチ&コンサルティングによって公開されている.

目的は通所介護が担うべき機能・役割の方向性やあり方の検討で,
10,000事業所へアンケートを送り,
回答のあった1,576件が対象となっている.


抜粋1

理学療法士,作業療法士の有無別で機能訓練の達成目標は,
「高齢者が楽しく過ごすことができる」がどちらも最も多く,
PT,OTがいる場合は31%,いない場合は42.7%

同じく次いで,「筋トレを行い身体機能の維持・向上を図る」
PT,OTがいる場合は26.2%,いない場合は8.4%,
「自宅で再び生活行為ができる」は,いる場合5.7%,いない場合11.9%だった.


感想1

いる,いないを区別しているのは,機能訓練指導員はPT,OTの必要がなく,
むしろ看護職員の方が多いから.(平成21年時点で7割が看護職員の兼任だった)
区別をして調査したのは,PT,OTは必要か判断しようという意図だと思う.

機能訓練の目的が「楽しく過ごす」,「生活行為ができる」となる割合が高いのは,
喜ぶべきか迷うところ.「楽しく過ごす」は便利な言葉として乱用され過ぎている.
「楽しさ」について主観的評価を記録できて,達成できているなら,問題ない.

テレビを観て腹をかかえて笑ったから今日は「楽しい」と,
あきらめていた園芸が再びできるようになった日々が「楽しい」は,
同じ「楽しく過ごす」に分類されているんじゃないかと,心配している.

「自宅で再び生活行為ができる」はPT,OTがいる場合5.7%に,
その結果よりも,
やっぱりなぁと思ってしまうことが悲しい.



抜粋2

機能訓練実施にあたり工夫していることは,
「利用者本人に具体的に聞いて目標を立てている」がどちらも一番多く,
PT,OTがいる場合は81%,いない場合は56.5%

「機能訓練指導員と介護職員で個別機能訓練計画を立てている」が,
PT,OTがいる場合は54.8%,いない場合は37%


感想2

「具体的に聞いて目標を立てている」について.
聞いているかどうかよりも,どんなことを聞いたのかに注目したい.
困っていることよりも,できるようになりたいことを聞いたか確認してみたい.

腰がイタい,と答えたから目標は腰部の痛み軽減とするか,
腰部の痛みが生じないように生活動作や趣味ができるとするかは,かなり違う.
目標が変わればプランが変わる.注目するべき違いだと思う.

腰がイタいって訴えているんだから,別に細かいこと言うなよ,という専門職を,
説得することが難しい.伝えるなら,目標設定のプロセスを伝えること.
それがカンファレンスや計画書の協同作成になると思う.


抜粋3

機能訓練のプログラム内容は
「集団的に行われるレクや創作活動」が
PT,OTがいる場合は83.3%,いない場合は86.6%

「日常生活動作の機能訓練に重点をおいた介助を実施」が,
PT,OTがいる場合は69%,いない場合は68.7%

「個別機能訓練計画書を作成し,体操,マッサージ等を実施」が,
PT,OTがいる場合は85.7%,いない場合は47.7%

個別機能訓練の内容は,

歩行,平行棒が21.8%,
機器,マシーンを使用したリハビリが14.6%,
体操,運動,ストレッチが11.9%,
上下肢,手指の機能訓練が10.1%,
マッサージ,徒手療法,温熱療法が6.6%,
その他4%以下が筋トレなど11種類で,

日常生活動作訓練,作業療法という種類が・・・ 2.5%


感想3

集団レク,創作活動,生活介助方法の工夫は差がないのに,
体操,マッサージ等を実施ではPT,OTの有無でずいぶん差が出た.
統計的に有為な差かどうかはわからないけど,印象として大きな差.

これはきっと,PT,OTがいなければ活動,
いればマッサージ等で加算請求の意味だろうと思う.
ボクは2年前,通所介護でマッサージ,ホットパック専門家の役割を依頼され続けた.

リハビリの人は,マッサージあるいは平行棒歩行,機械,ホットパックが仕事.
これが常識でしょ,という名の文化,歴史,習慣の中でボクら作業療法士は働く.
OTらしい仕事がしたいと言っても,97.5%の人はイイねと反応しない.



だからボクにはADOCが必要だったし,これからも必要.


2013/05/09

湘南OT交流会祭と日本臨床作業療法学会


酒に酔って記憶と足取りがおぼつかない夜でも,
翌朝にはどこに向かうか,どうやって歩むかは,
ブレたことはありません・・・・・なんてねぇ.

G.Wは先日,湘南OT交流会祭でプレゼンをしました.
会場の空気は沖縄の熱帯夜よりも熱く,
延べ500人以上の方々と実現できる希望を共有できた気がしました.

もし,作業療法を理解,実践へと導く扉は十分にいくつも開かれており,
新しい発見と鍵は今や必要性がない時代だというなら,
会場は空席だらけになっていたと思います.






ポイントと根拠はそれぞれの講師が工夫して抽出したので,
それぞれ特性ある環境の臨床で,実践を試みて欲しいと願っています.
実践の結果を評価しながら,効果的で適している方法の発見を応援しています.

あらゆる環境で,各々の解釈や好みの知識を組み合わせて,
作業を大切にするというポイントだけはピントを外さずに実践し,
課題や発見を共有して集約された英知が,導く場所へボクらは行きたいのです.

もっと背伸びして,手を伸ばして届こうとしている限り,
そして目標に意味づけされた目的が見えている間は,
他専門家やクライエントと協業して臨床,研究,教育を深めることが可能と思います.



そこで,
対立よりも協業を歓迎して議論を共有する,
まったく新しい場を共創することにしました.


日本臨床作業療法学会 

http://jscot.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=9262


平成26年3月22日(土)〜23日(日)に,
神奈川県立保健福祉大で第1回学会を開催します.
この学会が見ている,3つの目的です.

 1. 作業を大切にする
 2. 学際的
 3. 一人ひとりが主役

学会長からの案内→new OT道どうでしょう



機能,活動へのアプローチが目的の目標設定と実践であれば,
課題はこんなにも複雑で多様ではなかったハズです.
これほど多面的に分析する必要もありませんでした.

学会が見ている目的と目標を実現しようと決意した時から,
必然的に,派閥や学閥を越えた議論の(学際)場と,
1人ひとりが実践して共有できる機会が必要不可欠と考えるようになりました.

最適かわかりませんが,いまの時点でボクらが考えるベストな方法です.
ボクら作業療法士が作業適応し,作業的存在感を感じるためなら,
何が必要で,何が不必要か,ボクら作業療法士は見え始めています.






将来図が見えたなら,どこに向かうか,どのように向かうかは難しくありません.
先日のみなさんに会うために,ボクらは来年また神奈川へ行くだけです.
ボクらはメッセージを送るのではなく,互いに受けとるために,行くのです.