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2014/06/24

WFOTと琉球OT

世界作業療法学会も終わって,
育児と家事もようやく落ち着いた.
「楽しかった,自分の小ささを知りました,ありのままでいい」
すべてで,ひとつだったように思う.

ポスター発表をざっと見て,同じようなコンセプトとツールを開発した人は,
世界中探せばやっぱりいるんだなと思った.
でも,似てるじゃないか,と突っ込んでいる人はいないと思ったし,
それで困るのはYouTubeとクックパッドくらいだったので笑,
朝から気楽に会場をフラフラしていた.で,初日に発表.








ADOCが完成した時,人間作業モデル講習会で山田講師に,
「おもしろいツールを開発したんですよ,これでストーリーを引き出して,
MOHOで解釈するとハッキリわかることがあると思うんですよね」とか,
作業科学セミナーでRuth Zemke先生に,
「作業の概念をわかっていないと言われるかもしれないんですけど,
実践的には役立つと思うんですよね,どう思います?」などと質問をした.

今回はみんなのリハプランを海外に紹介するチャンスだったんだけど,
ポスターを見に来てくれた数少ない海外の方に対してボクは,
「プリーズ,あー,ヒーが紹介しますよ」とか言って.
友利くんと澤田さんに丸投げしちゃった笑.

意見交換できる機会なのに,挑戦できない男だなとガッカリはしたけれど,
だからボクは使えない人間だとか,日本人はダメだと卑屈になることはなかった.
たぶん,チャレンジした数と怒られた数なら世界トップレベルだと自信があったし,
その上で「知り合わなければ,自分で人生を変えれると気づかなかった」という,
多くのクライエントの言葉を覚えていたからだと思う.








そんな傲慢なボクでも,
仲間知穂さんらADOC for Schoolチームの積極的なプレゼンを見て,
これくらいやらなきゃダメだと反省した.
続々と集ってくる海外の方を前にして全く腰は引けず,
「自分たちは子供と親と教員のために,できる限りの貢献をしたい!」と,
つたない英語で粘り強くメッセージを送り続ける姿は,感動的ですらあった.

しかも,小児系の口述発表会場で,
「課題は目標設定と共有だ」と締める海外のプレゼンターが多かったから,
ADOC-Sの資料を持って会場内で発表者らに今井くんとプレゼンを始めていた.
「私たちはあなたたちの課題に貢献できる可能性がある!」と回ってると聴いて,
仲間さんたちが築いてきた実践経験が自信を育んでいるんだなと再確認できた.

出身校や地方在住であることを引け目に感じている人は多いけど,
どんな田舎にいたって,どんな職場環境だって,どんなに若くたって,
何をしてきたかで人は自分を信じられるんだなとも思った.








他にもADOC関連のプレゼンが続々.
なんて自信たっぷりな顔なんだー
でも,その過程にある悩みと苦労を知っているからこそ,
より強く伝わるなー







学会恒例のADOC飲みは46名!
ADOCが学会に登場した仙台学会が4年前?かな,
その時は友利くんと2人だったのになー笑

全国各地にこんなに頑張っている人が,
こんなにいっぱいいるんだなーと,
しみじみと・・・しみじみとした苦労と喜びが伝わった気がした.
仲地くんもね,あんまり知らないけど,トントン拍子ではないハズだもんね.







・・・もう眠い.
友利くんはOBPの経済的効果,QOL効果で,
思った通りに評判が良かった.海外の人たちの目がマジだったもん.






で,日本とはいえ,国際学会だったので,
竹林崇さんがやってること,効果はやっぱすごいんなだと,
あらためて知ることになった.これはまた別の日に記事に書くことにして・・・

理論と実践を結びつけるのは緊縛の課題であることは,
理論が誕生した時から逃れようのない事実として誰でも認識できると思う.
そこから目を背けないことを延長すると根拠に基づいた治療は必然的なので,
彼が追求していることを臨床家が求めるのは自然な過程だと再確認.

まぁ,海外は保険制度がわからないし,
海外の保険制度下で働いているOTを偉いと根拠もなく盲信していたころの自分は,
まったく何も見えてなかったなーと思った.







ADOCのMMSEカットオフ値というよりは,
認知症高齢者に意思決定の過程を求めることは否かどうかというテーマのプレゼンに,
人が集るのは不思議なことではなく,
誰がきても堂々としている齋藤さんに臨床経験の背景を垣間みた気がした方が,
むしろ再発見で嬉しくもあり・・・















仲間知穂さんの実践は世界のOTを変える可能性があると,
アン・フィッシャー先生が紹介した人がESIのロー・アン先生で,
作業療法の可能性についてディスカッションしている隣で昼間から酒を呑み・・・







医学書院さんとの会食では,
ぜったいに個人では訪れることのない高級すき焼き屋で日本酒飲み過ぎても,
次回作の企画についてマジメにディスカッションして・・・







養成校時代の恩師に偶然出会って学生の頃みたいにフィードバックもらって,
「あんたはまず髪を切りなさい」という言葉だけを胸に抱いて・・・







日本臨床作業療法学会で何をするべきかが,
やっと見えて,それを実現するための方法について議論した.

日本という島国でも,理想と現実を誠実に結びつけようとしていたら,
海外からの評価を気にせずに真摯にやっていれば,
それが評価された時にはいっきに日本に広がっているだろう.

まずは目の前の仕事を丁寧にコツコツと高いレベルで求めようと,
誰がみても認めざる得ない結果を追求しようと心に決めたのです.


2014/06/15

どう教えるかよりも,作業療法の何を教えるかだよね

今日は日曜だけど事務所の日直当番.出勤してすぐに,隣接する高齢者専用マンションから「来て欲しい」と電話があった.何が起ったのか話すよう促すと,「寂しい」と返ってきた.事務所に足を運んでもらって15分ほど話を聴くと,「落ち着いた」と帰った.遠くの方で「本田がゴールを決めたー!」とテレビが叫んでた.

ボクがゴールを決めた状態とは何だろうと考えた.よく話を聴くことは大事だね,と完結するのはあまりに雑過ぎる.彼女と施設が抱える根本的な課題を明確にして,作業療法士の知識と技術を使って貢献できることを考えた方がいいのかな.この思考過程こそが,実習生へ最も大事に伝えるべきことだと思う.



tomoriくんめがねOTさんの日記がおもしろかったので,リレーします.



近年,実習でレポートを課さない病院,施設が急増してきた.効率性と効果を考えると喜ばしい進展だけど.レポートを義務づけないことで問題解決したと思い込むセラピストがいないかと不安になる.教育方法は大事だけど,教育する内容ほどではない.その内容とは作業を大事にする実践で,OT協会や世界作業療法連盟も強調している.

教員だったころ,県外のベテラン実習担当者から「学生がICFでレポートを書きたいと言っているが,自分はICIDHしか知らない.病気が治ればADLが向上し,退院できるという考えでもイイか」と電話があった.「作業療法のことは私が教育しますので,病気のことだけ教えてください」と丁重に伝えながら,この人も葛藤しているんだろうなぁと思った.

作業を大事にする実践を学生に伝える上で難しいのは,自分がうまく実践できていないという自覚.今だってボクにもある.学生と望ましい結果を始めに共有してからスタートした方が効率よく教育できるけど,筋緊張ではなく習慣をターゲットにしているので思い通りにいかないこともある.でも,結果に辿り着くまでの過程で発見できることもある.








だからこそ,難しい,悩ましいと言いながら学生と一緒に考える.「釣りに行きたいって言ってたさね.じゃあ,連れて行こうかっていうと,それは違うじゃん.あの人が行きたい海に,行きたい時に,一緒に釣りがしたい家族や友人と行けるようにならないと支援にならないよね.でもさ,それって現実的かな.いや,オレが勝手に限界を決めてるだけかな,そもそも釣りである必要があるかな.いや,釣りじゃないとダメなのか.あぅあぅー迷うぅ.もっと本人から話を引き出して,家族からも情報集めたらゴールが見えるかもねぇ」と,一緒に考える.

習慣化を目的にする必要がない場合もある.ゴールがどのような形であれ,選択した理由に利用者と関係する人々にとっての価値がある.

「ボクら作業療法士は,特定の人々との関係の中で築かれてきた,個人的な意味と目的がある何かすることを作業と呼ぶ.作業活動で治療を行う人というよりは,相手が自分で作業ができるように支援する人なんだよ」こうして体験を通して学生に伝えることが,作業療法の強みを活かした臨床教育だと思う.


迷う時,自分と学生に伝える言葉がある.
「答えが見つけられないことは,苦しい.楽になりたければ,クライエントよりも自分が興味のあることに没頭すればいい.自分で考えずに他人から期待されているまま,訓練のための訓練をやればいい」

「楽しい!を手に入れたいなら,悩ましい!を覚悟しなくちゃ」


(支離滅裂な構成だなぁ.でもなぁ,考える過程をオープンにしようって書いた記事でもあるから,公開しちゃうか.無責任かなぁ.かわいいから許されるかな,そうだね)

2014/06/06

意思疎通が困難なクライエントと作業療法

4年前に就職した時,同僚の作業療法士から業務の申し送りを受けた.
特養ホーム利用者100人と通所介護利用者60人をマッサージ師,看護師と担当し,
作業療法士が入所と通所を合わせて毎月約40人分の機能訓練計画書を作成していた.

しかも,評価用紙は介護保険管理ソフト,Excel,ファイルメーカーで各々作成し,
3ヶ月毎に特養ホーム入居者の家族に計画書と同意書を手渡しながら面談していた.
20分前後の面談が100件近く入るので,その月は面談以外の業務はできなかった.

その合間も160人に対して機能回復のための訓練をマンツーマンで求められていたので,
「・・・・もしかして,影分身の術が使えるタイプですか?」
というのが就職初日に伝えた彼女への感想だった.



1ヶ月後,家族面談に参加してわかったことがあった.
家族は多くが50〜60代だったが,
「利用者さんの趣味は何ですか?」と尋ねても答えられない人が多いということ.

「親は家事と育児で忙しい人だった.趣味をやっている姿をみたことがないし,
家を出てからは親が自宅で何をして過ごしているのかよくわからない」と答えた.
なるほどねと納得したが,記憶の引き出しを探せば何か見つかるはずだとも思っていた.

「おひさしぶりです,リハビリテーションを担当している作業療法士です.
前回からの変化について報告しますが,その前に教えて頂きたいことがあります.
私たちは機能訓練を実施しますが,目的と目標がわかるようにしたいと思っています.








意思疎通が可能な方なら一緒に目標を決めることもできるのですが,
難しい場合は私たちが知識と経験を基に考えます.
でも,どうしても画一的なレクや訓練になってしまいがちで,不安になってしまいます.
関節の広がりや筋力が維持できたとして,それだけで良いのかなとも思います」


「機能回復が難しい場合もありますし,
私たちが提供する訓練というのも非常に短い時間です.
心身の機能維持は私たちの成果というよりは介護士の働きによるものです.
意思疎通が困難な方でも全員,毎食必ず車いすに乗ってもらうのは,
時間とエネルギーがかなり必要です.

ベッド上で栄養を注入する病院が多いですし,特養でも珍しいことではありません.
車いすに乗る機会があるからこそ,
関節と筋力と意識が保たれていると私は思っています」

「オムツで対応できることをトイレに誘導することも,
胃瘻で済むことを本人の能力を引き出しながら食事介助することも同じです.
このことは,よく覚えておいてください」

「それで保たれた身体的な機能を使って,頻度は少ないかもしれませんが,
本人だけの生活や人生に関係する機会を提供したいと全員が思っているわけです.
たとえば,個人的に思い入れのある場所や人と再び関係する機会を,
離したくないと願っています.







その機会のための機能訓練をしている,ベッドから離れた生活支援をしている,
と思えれば,私たちも不安なく継続することができると思うのです」

「本人と家族の期待する生活が必ず一致するとは限らないです.
でも,私たちが考える本人の希望よりは近いだろうという判断です」

「ということで,利用者さんの趣味は何ですか?」
「イメージが難しい場合は,ADOCのイラストを確認してください」



来週から特養ホーム入居者家族との面談が始まる.
分身の術をまだ習得できていないので,活動の規模と回数を一時的に減らすけれど,
それだけの価値はあると期待している.ここから始まる支援があるハズ.