仙台
午前9時.仙台朝市を散策してから駅に向かった.昨朝は立ちながらミニ海鮮丼を喰らった.各扉には10名ほどの人々が並んでいた.車内に乗り込むと落ち着いた雰囲気だったが,徐々に若者たちの話し声が重なり合って騒がしくなった.8年前の2017年1月,今以上にまだ何者ではなかった僕と齋藤さんは仙台市青葉で,作業療法における目標設定について講義を開催した.その夜,初めて雪を見たことは覚えている.
午前9時.仙台朝市を散策してから駅に向かった.昨朝は立ちながらミニ海鮮丼を喰らった.各扉には10名ほどの人々が並んでいた.車内に乗り込むと落ち着いた雰囲気だったが,徐々に若者たちの話し声が重なり合って騒がしくなった.8年前の2017年1月,今以上にまだ何者ではなかった僕と齋藤さんは仙台市青葉で,作業療法における目標設定について講義を開催した.その夜,初めて雪を見たことは覚えている.
長町
仙台駅から6分.乗る人も降りる人もあまりいなかった.昨日は仙台青葉学院大学・短期大学の長町キャンパスで開かれた第30回日本作業療法教育学会に参加した.大会長講演,教育講演に続いたワークショップで僕は司会を担当した.熊谷大会長の講演はオーケストラの厳かで折り重なるハーモニーのように,彼の選択した言葉が胸に響いた.覚悟,と表現した方がふさわしい.省察という単語が何度も登場し,感情や現行のシステムに流れされることなく冷静に現状を分析し,より望ましい状況へと変革するために建設的な意見を交じり合わせようという意志を受け取った.丸山さんの教育講演は思考の過程を言語化し,共有することの価値を説いていた.具体的なケースや比喩を多用しており,聞き手が結論と根拠をイメージできるように伴走してくれたので,納得感を得られた時間だった.良質なビジネス書を読み切った感覚だった.
太子堂
聖徳太子を守護神として祀る祠(ほこら)が地域の由来となっているらしい.ワークショップは養成校教員の立場から高橋さん,元実習生としてOT3年目の中村さん,臨床実習教育者として三浦さんが登壇した.積極性が足りないという抽象的な指導に対して自信を失い,自分への信頼も削り取られ,ただ乗り越えることが目的になっていた体験を共有してくれた.そこから客観的に状況を捉えるサポートに指導者は徹し,目標を明確にして実現するための方法を自由な発想で導き,行動に踏み切った.学生を中心にした臨床実習教育者と養成校の連携は,作業療法そのものであった.作業療法の教え方はこの10年で進歩したように思う.同時に考えるべきことは,作業療法の何を伝えるのかという議論が十分にされているのかと問い直す段階にあることを,教育に関わる人が共通認識することである.その流れを作ろうとしている学会の企画構成に気づいたとき,ふるえた.
南仙台
竹林さんが執筆した,予後予測って結局どう勉強するのが正解なんですか?が医学書院から出版された,南光堂からは基礎作業学テキストが東先生の監修,齋藤さんの編集で発行された.考えることを考えるように促し,なおかつ読者に手を差し伸べて,理解しやすいよう最大限に配慮された書籍だった.間違いのない答えと,そこに辿り着く思考プロセスを確実に手に入れいたいと願うのは,成長意欲があるからこそ湧いてくる考え方だと思う.背中を見て学ぶ,まず経験して理解するという教育が昔は投げっぱなしを正当化したが,いまはそれではついてこない,なんて思わない.わかるように教えた方が理解は深まる.今も昔も変わらない.
名取
せり鍋は名取の名物であったが,仙台の名物として売り出されている.昨夜,名取の人が悔しいと話していた.草の根っこは食わんという地元の人がいて,これを食べるのを楽しみに沖縄から訪れた人がいる.地元でも家で料理することはあまりないらしい.根っこをきれいに洗うことが難しく,時間と手間がかかるという.体験したことがないから,わからない.
杜せきのした
多くの乗客が降りて車内は静けさを取り戻し,温度が下がった.昨夕,出版社の編集者と打ち合わせた.洋館スタイルの小さめのカフェで,光を抑え込んだ店内の空気と甘いモンブランと苦いコーヒーは調和していた.クライエントの前に立ち,自分の知識と技術の不足を知り,打ちのめされてしまうことは悪いことではない.そこから膝を立て,腰を上げ,前のめりに立ち上がる強さは,不安を知らなかった頃よりも自信に満ち溢れている.しかし立ち上がれなかった同僚や後輩,先輩も数多く見てきた.歯を食いしばって泣いている人に,頑張れとは言えない.もう少しだけ前に進んでみようと思えるように,僕らにできることは何だろうかと仲間たちと考え続けきた.その答えがADOC,COT(日本臨床作業療法学会),医学書院の事例本シリーズだった.まだ足りない.
美田園
すぐに1人降りた.発車前に1人乗った.今年,2025年2月に齋藤さん,福岡の田代さんと山田さんと共に福岡県作業療法学会の基調講演で登壇した.学会の申込者は過去最多の400名だったという.伝えたいテーマは10年以上変わっていない.クライエントの可能性を信じ,共に歩み,目標を実現しよう,ということ.その過程で周りの理解が得られないことも,自分を疑うことも冷静に受けとめて,自分が正しいと思う道へ進めばいい.責任と自由を両の手で握りしめて,考え方の違う人たちと議論すればいい.
仙台空港
終点でも降りない客は何だろうか.コロナ禍はものの見方や考え方をすべて変えてしまったが,もうすでに多くの人は忘れてしまったように見える.忘れることは心の痛みをおいてゆくから,生きていく上で大事な習慣だと思う.あの時代が人間にもたらした良い影響は2つあって,1つは感染対策に対する知識と技術を向上させたこと.もうひとつは常識を疑う視点.事実に基づいて結果を予測するのか,前提となる正しい知識やルールに基づいて考え方を展開するのか.事実が正しくないこともあるし,ルールが間違えていることもある.帰納的思考と演繹的思考のどちらが有効かというよりは,自分がどちらを採用しているのか冷静に見極め,状況に応じて使い分けて,より正しいと思える結論に近づいていく.意識的か無識的かは問わず,私たちは落ち着いて考える習性を身につけたのではないかと思う.深夜に飲み屋で立って牛タンを日本酒で流し込みながら,そうだといいなと独り呟いたのを思い出した.
那覇空港
空港に娘が迎えに来てくれた.駐車した場所を忘れてしまい,しばらく巨大な駐車場をさまよい歩き続けた.看護大学3年の彼女は先月,急性期病院の整形外科と老健施設,先週は総合医療センターの小児科で臨床実習に挑んだ.どの実習指導者も丁寧でとても優しいという.私たちが選択した言葉と行動は私たちを形づくり,その影響を受けた周りの環境も少しずつ変わっていく.私たちの学生に対する姿勢は組織と地域の文化となり,いずれその輪の中に私たちが関係する人々も参加するかもしれない.人の可能性を信じて,自ら能力を発揮できるようにサポートすることが,当たり前になるといいな.