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2013/02/26

担当者会議と作業療法評価

作業療法士として働いた始めの3年は,仕事があまり好きではありませんでした.
tomoriくんが本当の作業療法の世界へとボクを強く導いてくれなければ,
今でも妥協と言い訳を繰り返し,仕事に満足もしていなかったでしょう.

読めと言われた「クライエント中心の作業療法」と「作業療法の視点」に衝撃を受け.
和訳のまま文章を完璧にコピーして,クライエントに作業療法の説明をしました.
自分の言葉として馴染むようになるまで,繰り返し使い続けました.

回復期リハ病棟では1日に15〜18人を担当していましたが,
初回面接は必ず30分から60分かけるようになりました.
目標が明確になって共有できるまでは,身体に指一本触れないようになりました.



彼女の家族は意見をはっきり述べるタイプだから配慮を怠らないようにと,
通所介護の担当者介護が始まる前にベテラン職員たちに言われていた.
ADOCの評価シートを読み返しながら,何も心配はないと返事をした.

本人,家族,通所介護相談員,他事業所のケアマネと通所介護相談員,
福祉用具業者が一同揃った担当者会議の場で,
いつものように最後になって発言の機会が回ってきた.

「平行棒内を介助すれば5mは歩くことができます.
でも,介助が必要ですが,2階の自宅まで階段を登り降りすることで,
十分に身体機能の訓練はされていると思われます」



「別事業所のデイサービスで,立ち上がり訓練が行われている事も確認できました.
完全に,身体機が能回復することは難しいですが,今の生活を継続できれば,
急激に生活動作の能力や身体機能が低下することはないと思われます」

「それに訓練の時間は10分〜15分程度です.
残りの時間をどう過ごすか,頭と身体と心をどう使うか,が大事です.
訓練のためでもありますが,生活を楽しむためにも,大切です」

「トイレの時に転ばないことが生きがいの人は,たぶんいません.
より良く生活するために必要なことかもしれませんが,
あくまでも,たくさんある手段の中の1つです」



「みなさんに渡した資料は,ADOCという作業療法の評価シートです.
彼女は手工芸がやってみたいと話しました.
自宅でも通所介護でも,車いすに座って長く過ごす時間が苦痛と教えてくれました」

「昔やっていたことで,今でもやりたいこと,
そしてどうにか工夫すれば,できるようになるのではないかと彼女が考えました.
通所介護で支援して習慣化できれば,自宅でも取り組めるかもしれません」

「何もせずに車いすに座って過ごす時間が,
彼女が自らの意思で,頭と心と身体を使う時間になれば,
訓練としても生きがいとしても,意味を満たすようになるかもしれません」






看護師がADOCを使って情報を集め,作業療法士としてボクがまとめ,
相談員が会議で同席者にADOCの説明をしながら手渡し,
会議の後に他事業所のケアマネが計画書を作り直して全員に送ってくれた.

介護士が探してきた手工芸の材料は彼女の能力にふさわしく,
なおかつ,完成作品は達成感を満たす仕上がりになりそうだと,
彼女が納得したものだった.

翌々日,彼女の家族から手紙が届いた.
「作業療法士さんの意見は,今までの自分になかった視点を与えてくれました.
母親のこと,リハビリのことを考え直す機会になりました,感謝します」


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