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2012/02/15

不安な作業療法士

3年前、沖縄で開催した作業科学関連の研修でアンケートを聴取した。
100人の参加で回収率は80%、
「作業療法を説明する時に不安を感じますか?」という問いに、
98%の参加者が不安があると答えた。

1人だけ不安ないと答えたのはボクだったので、
実質的に全員が不安を感じていると答えた。
すぐに日本OS研究会の理事に一斉メールを送ったのは、
いつもの勇み足だったかな。




2年前の8回沖縄県作業療法学会で、
通所利用者にOSA2、AMPSで評価して人間作業モデルで介入した事例報告。
共同演者は首都大東京の山田先生。
他に、作業科学の視点に基づいて地域に介入した報告、
学生の主体性を促進する講義形式について報告した。


学会終了後、15年目の先輩が話しかけてくれた。
人間作業モデルで介入した事例報告について感銘を受けたと、
握手を求めてくれた。

老健施設で勤めていると、毎日の業務をこなすことに精一杯で、
入居者の生活に役立つ関わりができたのか不安に感じる、と。
理論系の講習会、研修会にはいつも参加しているが、
それを日常の業務に活かすことが上手くできないと話した。




講師の話を聞いて感銘を受けた分だけ、
それができない自分が情けなく、
利用者に申し訳なく思い、すごく辛くなると話した。
もっと勉強すれば理解できるようになって、
臨床で思い描くような支援を提供できるかもしれないと思い、
ちゃんと勉強していない自分が恥ずかしくもなる、と。

同じ沖縄で働いているあなたが、
理論に基づいた支援をわかりやすく報告してくれたことで、
自分にもできるかもしれないと思えたから、
感謝していると言いながら握手を求めた先輩は、
震えながら少し泣いていた。

教員の頃に実習生の臨床教育を依頼したことがあったので、
先輩が勉強熱心で、頭が良くて心優しい作業療法士であることは、
ボクは知っていた。
だからボクは聴く事が、苦しかった。



本当にこの先輩は、
どうしようもなく無知な怠け者の臨床家だろうか。



「真の作業療法」を実践できない作業療法士と指差す人は、
あるいは自分を指差して泣いている人は、
何を守り、何を育みたいと思っているのだろうか。





先輩の話をよく聴いた上で、ボクは答えた。

「いま、ADOCという評価ツールを、
ボクらは開発中です。あと1年待ってください。
先輩は、なにひとつ、間違っていません」


誰も、なにひとつ、間違っていません。

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